「かけがえのないマグマ 大森靖子激白」(大森靖子, 最果タヒ)

2016年の2月頃、アルバム「TOKYO BLACK HOLE」が発売される直前くらいに発売された書籍です。
その頃に行ったライブの会場で勝ったのですが読まずに積んでいたので、お盆の時間がある時にやっと読みました。
もうすぐ、大森さんの新しい曲も発売されますしね。

内容的には、大森さんのここまでの人生の自伝みたいな感じです。
大森さんがラジオで語っていた昔の出来事や考え方の変化がまとまっています。
大森さんの曲やどんな人なのかを多少知って、もっと知ってみたいという興味があれば読んでみると面白いかなと思います。一方で、大森さんのことを全く知らない状態でここから知ろうとするのは合っていないかも。少なくともいくつか曲を聞いた後だと面白いと思います。

あと、本の外装も中身も、全体的にピンクなのが大森さんらしいです。

内容は、1部がここまでの大森さんの自伝。
2部が主要曲の歌詞とそのちょっとした解説。1部では歌詞と絡んだ話も多々出てくるので、詳しく歌詞を知りたいときは1部を読んでいる途中に2部の歌詞を見に行くという読み方が良いと思います。
その後に、最果タヒさんと大森靖子さんそれぞれのあとがきが続きます。

以下、ネタバレ注意。

***

大森さんの音楽をする理由に行き着くまで


細かい話は読めばいいので端折りますが、ステキだなと思ったのが、大森さんが今「音楽をやる理由」としているところにまでたどりつく経緯です。経緯というか、大森さんのここまでの人生全体がそこに向かう境遇と本人の選択の塊だったんだなと思いました。
小学校、中学校では、「普通の女の子」に成れないことに悩んでいたこと。大学から本格的に始めた音楽は、最初は自分が気持ちよくなるために歌うものだったこと。活動を続けていくうちに、自分の歌やパフォーマンスから自分が意図しない形で捉えられ、メディアで拡散されていったこと。メジャーになることや、死ぬ死ぬトークからの結婚や妊娠で、今後何のために生きて音楽をするのか考えたこと。
その答えとしての、
あたしの有名は 君の孤独のためにだけ光るよ

の歌詞。

大森さんが、小さい頃、普通の女の子ではなかったことで本当に共感できる歌というのがほとんどなかったこと。
そんな、昔の大森さんのような人に、「これはわたしの曲だ」と共感できるような歌を届けて、その人の人生を肯定すること。
これを音楽をする理由に据えられるのは、大森さんが、小さいころから普通ではない自分とあこがれの女の子との違いを客観的に捉え続けてきたこと、そこから、自分自身の気持ちでは無く、自分が見たり知ったり想像した境遇の女の子をテーマにして歌を書けることにあったんだろうなと思います。

「大勢の人たち」ではなく、たくさんいたとしても「個々の人」を見ていきたいというのは、46ページに書かれていた震災の時のことでも触れられているんですよね。そういった経験からも、大森さんの考え方は固まっていったのかなと思います。

人がみんな、他人の評価なんかに怯えずに、ただ感情をスピーディに、かつ美しく表現して、それを享受した喜びでまた新しい価値観や世界がうまれていく、そんな社会に少しでも近づけばと思っている。

そんな思いが込められた上記の歌詞は、「マジックミラー」の一節で、2015年の全国ツアーのラストの中野サンプラザでの公演で初めて歌われたものです。
自分もそのライブの場にいることが出来たので(この記事)、ほんとに行ってよかったなと思いました。

水色のレイディー


このブログの検索キーワードに「水色のレディ」というのがけっこう多いんですよね。大森さんの「きゅるきゅる」の歌詞に出てくる言葉です。
歌詞を見ると「水色のレイディー」らしいけど。
「水色のレディとは何なのか?」ということで検索して、自分が勝手に考察した記事(大森靖子「洗脳」その2)にたどり着くのでしょう。
自分は勝手に、White ladyという英語で幽霊を表すものの水色版と考えていました。

この本の、2部の「呪いは水色」のところで、水色が着られる女性はそんなにいないけれど、松田聖子は着られるから松田聖子は水色。ということが書かれていたので、本来だとソッチのほうの意味があるのかなと思います。

一方で、個人的に、「White ladyの水色版」というのも気に入っているし、作品は世に出たら受け手のものって考え方もあるし、この本にもあったけれど、「絶対彼女」は加護ちゃんに子供が出来た時に歌った曲だけれどファンの人には別の捉え方をした人がいてそれも面白いってのもあったし、こっちの方の説も持っておこうかなと思います。

神様に、ならないようにしたい。


この文から始まる節があります。そして、途中では、
私のこと、夫のこと、神聖視なんてしなくていい。

大森さんはすごい人だと思います。一方で、大森さんは自身を特別視してほしくなくて、他の人と変わらないひとりの人間として受け止めて欲しいと言っています。それは、人を動見るかだけではなく、結婚や出産といった物事に対しても。
これは、「マジックミラー」でもあるように、ライブのステージ上でも聴衆でも同じ立場で、ひとりひとりと対等に向き合いたいということでもあるし、人や物事を固定観念で見ないようにしようっていうことでもあると思います。
「大森靖子とはこういう人だ」とか、「結婚(出産)は女の幸せだ」とか。そういう世の中が決めたイメージで捉えるのではなく、自分がどう感じたかで捉えて欲しいということでしょう。


そんなこんなで、やはり大森さんの生きてきた経緯と考え方は興味深いなと改めて感じました。
これからも、生きていく中でいろいろと変化していき、その都度でやることを見極めて行動していくのでしょう。
新曲もでますし、自分は11月のライブには行く予定なのでこれから楽しみです。

また、
先月頃から開始した大森さんの公式ブログもあるので、大森さんの現在を追っていく一つとしてみていくと楽しいです。
大森靖子 公式ブログ

ちなみに、公式ブログが始まった今現在でも、前からあるブログのほうもたまに更新されるのでこちらも見ておきましょう。
あまいしね【コピペ推奨】