「オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで」(窪薗 晴夫 編)
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モフモフやキンキンといった、日本語のオノマトペ(擬音語、擬声語、擬態語、擬情語)の研究を扱った本。
コンコンのようにK行から始まると硬い印象を表す傾向があることや、スクスクなどのABAB型の場合は、第1音節(A)の子音が表面の印象を表し、第2音節(B)の子音が動きを表す役割があったり。昔は、「キンキン」は甲高い声に使われていたが、ビールなどが冷えているようすを表す「キンキン」の使われ方も増えたり。
それから、日本語以外の外国語でもオノマトペが多く存在するものがあり(韓国語や、アフリカ、南アメリカの国に多いらしい)、そちらと日本の比較もされていました。その際に、オノマトペのレベルと言語の比較もしており、声や音を元にしたレベル1(低レベル)のものは英語などのオノマトペの少ない言語にも見られるけれども、身体感覚や感情を表すレベル3のオノマトペは、オノマトペの発達している言語でしか見られないという違いもあるようです。あとは、国によって、オノマトペを使うことが幼稚とネガティブに思われているところや、逆にオノマトペをうまく使える人のほうが詩的とポジティブに捉えられる国もあったり。海外とのオノマトペ比較は、「こういう傾向がある、仮説がある」という内容が多いようでした。これも、オノマトペが辞書に載っていない国だったり検証するデータが少ないからのようです。その中でも日本はオノマトペのデータが多く残っているほうだとか。
他にも、赤ちゃん言葉とオノマトペの関係性だったり、赤ちゃんが言葉を覚え始める頃にオノマトペが重要な役割を果たしていることを示唆したり。「モフモフの猫」のような新しいオノマトペがどういう風にできるのか、新しいオノマトペの表す印象を推測するシステムなど、興味深い内容が多かったです。
途中のコラムも面白いです。アニメサザエさんのタラちゃんの足音が、到底足音じゃないものなのはオノマトペをよく使う日本ならではだからとか。者に痛みを伝える時に使うキリキリ痛むとかズキズキとかのオノマトペから、どのような症状かを推察する話は、オノマトペの実用的な側面だと感じました。
あと、少し関係ないですが、オノマトペなどの言葉を分析する時の分解の仕方で、音節とかモーラを使い分けていたのも興味深いです。略語を作る時には、[短・長]の形は避けて[長・短]、[長・長]の形にするとか。俳句の5・7・5は、休止まで入れると8・8・8になるとか(5拍+3拍休み、7拍+1拍休み、・・・という感じ)。
ということで、これもまた興味深い本でした。