大阪万博の太陽の塔などで有名な芸術家、岡本太郎の著書。
芸術とは何かということを書いた本だが、芸術とは何かを伝えるために世の中とは何かを伝える必要があり、そこが非常に面白かった。
1954年に発刊された本だが、内容自体は今の世の中へのメッセージとしても当てはまっているため、今読んでも面白い。むしろ、60年以上も前に岡本太郎さんが主張していた内容が、未だに痛感させられる世の中であるということが、60年前から世の中の人の意識はあまり変わっていないんだと少し悲しさも感じる。
そんな本なので、芸術に興味のある人にもない人にもどちらにもオススメ。
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内容を書いていくとどれも印象的できりがないので、個人的に選んだ要所だけ。
芸術は「きれい」であってはならない。「うまく」あってはならない
日本の文化的なものは、ほとんどが大陸から来たもの。
世界は狭くなった(移動や情報の伝達手法の発達で)。もはや、国ごとに文化圏があるわけではなく、地球全体が一つの文化圏となった。
新しいといわれればもう新しくない
芸術と芸能(芸事)は異なる。芸術は新しいものを作ることで、芸能は既に決められた型を習得すること。
「芸術」と「芸能」は違うものにもかかわらず、世の中のほとんどの人々はそれをひとまとめにして捉えているからよくわからんことになっているんだとおもう。
子供が描く「赤い丸の周囲にちょんちょんの太陽」は、既に型にハマってしまっている。
芸術は、「自由」に描くこと。しかし、「自由」ということにこだわると、ただちにまた「自由」ではなくなってしまう。
上にあげたキーセンテンスだけを見ると、突拍子もなく感じられるものもあるかもしれない。また、「芸術家が書いた本だから、内容もぶっ飛んでいるんじゃないか」と想像するかもしれない。
しかし、一度読んでみるとすぐに分かるが、この本の内容はかなり論理的で、だれでも納得できるように書かれている。読み終われば、上にあげた内容はすべて納得のいくものになっていると思う。さらに、具体例としてあげられる岡本太郎自身の経験は興味深いものが多く、そういう話を楽しみながら読むという面も、自分がこの本を読み進められた理由である。
自分がこの本を読んだきっかけが、大掃除で捨てられる予定の本の中から面白そうだから持ってきた、だけだったのだが、今となっては読んでみてとてもよかったなと思っている。