「風の谷のナウシカ 全7巻」(宮崎駿)

腐海が広がっていく世界と、昨今のウイルスの拡がりに近いものを感じながら読んでいた。
「風の谷のナウシカ」のアニメ映画は何度も見たけれど、漫画を読むのは初めて。
アニメ映画の内容は、漫画(全7巻)のうちの2巻まで。しかも、アニメのほうは時間内にまとめるために話もすこし変わっていたんだなと分かった。アニメ映画を見ていたときは、クシャナが戦争している相手がだれなのか全く理解していなかったし。
ただ、映画の方でも、ナウシカの世界観や、普通の人は敵対する存在である蟲にまでナウシカが心を開き開かせる感じは伝わってきていたので、その先の話がどうなるのかを漫画版で読めたのは良かった。

以下、ネタバレがあるかも。

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続き。
7巻だけだけれど、話の進むテンポが早いのでけっこうな大作だった。
腐海の秘密や、新しい勢力がどんどん明らかになっていきながら話が進んでいくので引き込まれる。
勢力としては、トルメキア国、風の谷も含まれるトルメキアから少し離れた小国群、腐海と蟲たち、トルメキアと戦争をしているドルク国、一部の蟲と共存している蟲使いたち、腐海に適応して暮らしている森の人、腐海の仕組みを作った旧人類。
さらにトルメキアの中でも、僻地に飛ばされたクシャナの軍や、クシャナの育てた軍隊を奪って使っている兄たちの軍だったり、各勢力のなかでも細かく別れている。
もともとは敵対していた勢力たちが、敵にでも心を開くナウシカによって、少数の協力者が現れていき、ラストに繋がる。
敵だと思っていた勢力も、内情が分かると憎めないというか、そういう考えがあってやっていたんだなと理解できて、うまいこと丸く収まることはできないのかと悩ましい感じになる。悪政王だと思っていたドルクの王やトルメキア王も、それはそれで王として考えで行動していたんだなという印象だった。

環境汚染や遺伝子組み換え技術などが話題になっていた頃なんだろうなという、だいぶ昔の作品という印象だったけれども、その話の内容や提起している問題などは現実世界では未だ解決されていないものなので、興味深く読んでいた。
前に岡本太郎の本を読んだ時と似たような印象で、昔の本だけれども、扱っている核心は未だ衰えず面白いものだった。