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新しい宗教を作って教祖になりたい人のための本。ですが、宗教とはどういうものなのかを、「宗教を作る」というある種のメタな視点から捉えたいという人にもオススメの本です。
自分がこの本を読んだ理由としては、前々から「今の日本は無宗教の人が多いけれど、アイドルとファンの関係とか宗教なんじゃない?」という考えを抱いていたこと。そして、それを考察できるほどには自分が宗教というものを知らなかったから。そんな折に、ネット上のどこかの東大生のブログで、この本がオススメの中に含まれているのを見かけて存在を知ったのでした。
この本を読んだあとの考え方の変化としては、「アイドルが宗教」というのではなく「趣味の一つに宗教もあるのではないか」という見方も増えました。
追記
書いているうちに思ったのですが、「宗教とは新しい価値観を与えるもの」という抽象度で認識しておくと良いのかなと思いました。
追記ここまで
この本は、教祖になるためのマニュアルというスタンスをとっているため少しふざけている側面もあります。ですが、教祖になるためのノウハウを既存の宗教を考察して得る、ということをしているため、様々な宗教をもとに「そもそも宗教とはどういうものなのか」を知るにはもってこいのものです。
以下は、この本から自分が読み取った具体的な内容のメモ。
教祖とは人々をハッピーにする人
この本で何度も出てくる言葉。教祖とは人々をハッピーにする人。
「宗教」をメインに捉えなおせば、宗教の目的とは人々をハッピーにすること。
本の中で強調していることもあり、これが宗教の本質だということです。
ただ、どんな人をハッピーにするのか?というのが重要。
現在の社会システムで不幸になる人をハッピーにする
これもこの本で言っていることの本質。
現在の社会システムは完璧なものではなく、このシステムで作り上げられる価値観で捉えると不幸になる人が出てくる。ニートとかワーキングプアとか。そういう人たちに、新しい価値観を与えて肯定することでハッピーにするというのが宗教のやっている(やってきた)こと。
例に挙げられていたもので印象的だったのは、仏教の出家。
「仏教で悟りを開く修行に行くために出家します」なんて言ったら、すごく徳の高そうな行為のように感じます。しかし、この行為を別の視点から捉え直すと、「社会から離脱して山に引き篭って暮らします」ということ。生産性のかけらもない。釈迦も、家出して山にこもっていたんだから、現代のニート以上に社会不適合な行為なのである。しかし、その行為を「出家」という崇高なモノに仕立て上げたのは、仏教がそういう価値観を作り上げたから。同じことをやっていても、価値観が変われば肯定されるのです。
資本主義社会での幸不幸というのは、お金のあるなしと大きく関わっている。そのお金の価値観の束縛から逃れるための行為が、仏教でいうお賽銭(お布施)だったり宗教への寄付だったりなのだそう。そう考えると、新興宗教に多額の寄付をするというありがちな行為も、それを信者が望んで行っているということも、納得できます。
また、「宗教は反社会的であるべき」という考え方も、この「社会システムで不幸になる人をハッピーにする」という考え方に沿っています。
今の社会に問題があるから不幸な人がいる、そういう人を救うために別のシステムを作ろうというのは反社会的そのもの。そして、宗教自体も広まって時間が経つと社会の一部となります。そうすると、「今の宗教には問題があるから改革が必要」という考えを持った人が現れて行動を起こすことで別の宗教として分離していく。これは、キリスト教やイスラム教など現在もある主要な宗教が生まれた経緯と一緒なのです。そして、同じ宗教の中でも宗派が別れていったのも同じ仕組みでのようです。
人間(信者)の需要に寄り添うのが教義をつくる基本
これも面白いなと思った部分。
宗教の教え(教義)は、神の声とか上から降ってくるものではなく、ハッピーにする対象の人間の需要に答えるようにつくるというもの。
信者が、自分は特別な宗教を信仰していると感じられるように、特殊な制約をつけて(食べてはいけないものとか、お祈りの時間とか)、日常生活の中で「自分は特別なんだ」と思えるようにしてあげるとか。あまり制約がきつすぎると信者になってくれないから、ゆるめでもOKにしたりとか。
1週間に1回地域の信者で集まってお祈り会をしましょう、みたいなルールも、近所の人たちで集まって仲良しサークルを作ることによって、独り暮らしの人とか最近引っ越してきた人をコミュニティに属させてあげようという意図があるようですし。
宗教も科学も世界を捉えるための一手段
科学的な手段で世の中の出来事を説明できますが、説明できるのは未だ部分的で、科学では説明できない出来事も世の中にはまだあります。心霊現象とか超自然的な現象もそうですが、そういうオカルト的なものだけではなく、もっと身近な、人の心や感情、思考の仕組みなどはまだ分かっていないことだらけです。そういうモノをとりあえず説明して形的にでも納得しておくための手段として宗教は役割を持てるんじゃないでしょうか。
書いているうちに思ったのですが、「宗教とは新しい価値観を与えるもの」という抽象度で認識しておくと良いのかなと思いました。今までの自分に無かった価値観であったり、何かを判断する時に頭を悩ませすぎないようにそのまま利用する価値観といった感じで。
そんなこんなで、宗教とは何なのかを捉える一つの見方として、とても興味深い本でした。
これ関連で他に書いてみたかったこともあるので、いつかブログにアップすることになるでしょう。