デジタルTCG関連のことで、前々から思っていたのだけれど文章化するまで至っていなかった考えがありました。
下記のツイートを見て、やっぱりそうだよなと自分の中で考えがまとまった感じがあったので書き残しておきます。


まず主張を簡単に書いておくと、
ライトユーザーからすると対人戦ってハードルが高いよね
ということと、
対人戦はヘビーユーザーだけがやれば良いんじゃない?
という2点です。

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デジタルカードゲームは対人戦がやりやすい


アナログのTCGと比較して、デジタルカードゲームの長所に「対戦相手が確保しやすい」という点があります。
アナログだと実際にカードショップなどで会わないと対戦できないのですが、デジタルならネットがつながれば世界中のどこのプレイヤーとも対戦できるのです。
アナログTCGはそもそも「対戦相手がいなければ遊べない」ものだったので、デジタルTCGのこの利点は非常に重要なわけです。
というわけで、現在あるデジタルTCGの主な遊び方は対人戦がメインになっています。

一人でCPUを相手に遊ぶのは、最初のルールを覚えるためのチュートリアルだったり、ゲームに慣れながらカードを集めるためのストーリーだったりとがありますが、分量的には少ないものです。ゲーム製作者側の想定としても、CPU戦は練習や準備のためのもので、メインはその後の対人戦というスタンスで作っているのだろうと思います。
アナログTCGと違って、いつでもどこでも対戦相手が見つかるのだからそれをメインに据えるのは当然のことでしょう。

「いつでも対人戦」はしたくない性格


これはすごく個人的な感情なのですが、デジタルTCGにおいて、
自分は「いつでも対人戦」はしたくないと感じています。

具体的な自分の感情としては、そのデジタルTCGはやりたいけれど、対人戦まではしたくないという状態です。
実際のところ、自分がデジタルTCGをする時は、最初のチュートリアルやストーリーで満足してしまったり、その後も新しいデッキを作る→CPU戦を繰り返すことが多いです。
対人戦をしようという気になることもありますし、一定期間は対人戦を続けることもありますが、数日したらたいていやめてしまいます。そんなに日常的に対人戦をすることができないんですよね。そのゲームに飽きたというよりも、対人戦までする気がなくなったからやめるといった感じです。

一人でCPU戦だけ続けていれば良いじゃないとも思うかもしれませんが、現状のデジタルTCGはチュートリアルを過ぎるとCPU戦をいくらやっても新しいカードが手に入らないという設計なんですよね。そして、新しいカードが無ければ新しいデッキも組めないので、放置してしまうという。対人戦を推奨する設計だからこうなっているのでしょう。

ちなみに、DuelystというデジタルTCGは、デイリークエストとして一人用の詰将棋的なものが毎日更新されます。そのため自分は、毎日起動してそのデイリークエストだけをやって、対人戦とかはせずに終了するということを繰り返しています。この行動も、「そのゲームはしたいけれど対人戦はしたくない」という状況に当てはまります。

対人戦は心理的ハードルが高い


なぜ対人戦をする気にならないかというと、自分にとって対人戦は、心理的なハードルが高いのです。
細かい要因を考えてみると、
スキマ時間にはやりづらい

CPU戦ならやってる最中に別の用事ができて放置したり中断したりできますが、対人戦だと申し訳ないのでそれができません。そのような中断が無いように、まとまった時間がある時にやらないとと感じてしまうのです。

負けず嫌いは止められなくなるからそもそも始めたくない

負けず嫌いなので、対人戦で負けたら勝てるまでずっとやり続けてしまうだろうと想像できます。その、いつまでかかるかわからないという心配があるので、そもそも対人戦を始めたくないと思ってしまうのです。

対人戦は練習でなく本番感がある

これはアナログTCGをやっているからかもしれませんが、対人戦は本番という感じがしてしまいます。
アナログTCGでは、デッキを組んで一人回しをして練習して、実際に対人戦で回してみるという過程を踏みます。もちろん、あまり練習していないデッキを持っていくこともありますし、大きな大会でなければ対人戦でも練習だとは思います。ただ、アナログTCGは良くて週1回くらいしか対人でプレイする機会がないので、それだけ意気込んで対戦するというイメージが自分の中にあります。
その考えをデジタルTCGの方にも引きずっているのだと思います。

負けたくない、勝って気持ちよくなりたい

今まで書いたものとも少しかぶりますが、やっぱり自分は(というかすべての人間は)負けて不快にはなりたくないのです。勝って気持ちよくなりたい生き物なのです。
しかし、対人戦となると同レベルの相手でも五分五分で負けてしまいます。半分勝てれば良いだろうとはならないのです。人間は負の感情のほうが強く残るので半分勝ててもダメで、感情的には勝ち越さないと不快側に傾いてしまいます。
気分的なことだけで言えば、CPU相手でも良いから9割勝って、気持ち良い状態のまま布団に入って寝たいのです。

自分と同じような人は少なからずいるはず

このような要因から、自分は対人戦の心理的ハードルが高く、練習がてらとか気軽に対人戦をできないんだろうなと思います。
そして、少なからず自分と同じように対人戦のハードルを感じている人はいるんじゃないかなとも思っています。
もし、自分のような、軽々しく対人戦ができない人のことも考慮してデジタルTCGをデザインするとしたらどのようなものにしたらいいのでしょう。

デジタルTCGはポケモンのような設計で良いんじゃないか


ここで冒頭に貼ったtwitterの投稿に話がつながりました。
自分も、デジタルTCGはポケモンのような設計があっているんじゃないかと思っています。
具体的に言えば、
ライトユーザー向けの一人用

ポケモンにはまず一人用のストーリーモードがあって、そこでポケモンを捕まえ、育て、バトルしてジムリーダーや四天王といったハードルを攻略し、エンディングを迎えます。
これだけで十分ポケモンというコンテンツを楽しむことができたといえます。実際にここらへんで止めて対人戦はちょこっとしかしたことのないようなライトユーザーも多くいるのではないでしょうか。

ヘビーユーザー向けの対戦

ストーリー終了後、ポケモンをより楽しみたい人は、対人戦をします。対人戦のためにより強いポケモンを厳選したり、流行り等の環境に合わせてメタを突く方法を研究したりして、対人戦でランクの上位を目指します。
このようなガチで対人戦をしたりゲーム配信のような情報発信をするのがヘビーユーザーです。

ライトとヘビーの人口ピラミッド

ゲーム配信の数を見るとガチで対人戦をやっている人が多くいるように感じますが、それはそもそもポケモンのプレイヤーが多いですし、その配信の観戦者はライトユーザーがほとんどだと考えられるので、数的には ライトユーザー>ヘビーユーザー となるでしょう。
この、ライトユーザーが沢山いて、ヘビーユーザーが少なめという人口の構成は自然です。
最近話題のe-Sportsは、ゲームの対戦をスポーツのように観戦するという楽しみ方です。たくさんのライトユーザーが観戦者になり、少数のヘビーユーザーの対戦を観戦して楽しむというこの構図にも合致します。

この設計をデジタルTCGでも

デジタルTCGでもこれを実現すればいいのにと思います。
具体的に言えば、チュートリアル後の一人用のストーリーの量を増やすこと。
そして、TCGの面白さ(新しいカードを手に入れる、そのカードでデッキを組む、対戦相手に合わせてデッキを調整する)を体験できる機会をもっとたくさん、そのストーリーの中に入れるべきです。
このTCGの面白さを詰め込んだストーリーを、勝率9割で進めていけたら気分的にも良くなって、さらにそのゲームが好きになるでしょう。強いボスなどから生まれる1割の敗北はストーリー上の良いアクセントです。

多くの人はライトユーザーとしてここまで楽しめばOKです。ストーリーをこなした後なら大抵のルールやカードを把握した状態にあって、その後の対人戦の観戦を楽しむことができます。

ゲームに深くのめり込んだ少数のプレイヤーは、ヘビーユーザーとして対人戦に挑み、環境に合わせたデッキを研究したりプレイングを磨いたり、ゲーム配信をしたり大会に出て白熱した対戦を行い、観戦者に応援、賞賛してもらえばよいのです。

さいごに、少し補足


今回は、ライトユーザーとヘビーユーザーという2つにユーザタイプを明確に分けて書いてきました。もちろん、現実にはそんなにはっきりと別れるわけではなく、ミドルユーザー(と言えば良いのかな)のような中間的な人もいるわけです。
また、TCGはプレイヤー以外にも様々な関わり方があります。特殊なデッキをビルドしたり、背景世界やキャラクターを深掘りしたり、イラストやシャドウアート(デジタルでは難しいか)、有志イベント主催などなど。
ゲーム自体や公式の他にそういった様々なユーザがいるからこそ、そのゲーム界隈が盛り上がっていくので、その様々なユーザ層が共存できるような環境ができたら理想なのだと思います。