「秋期限定栗きんとん事件」(米澤穂信)
久しぶりに小説を読んだので感想を残しておきます.
以下,ネタバレ注意.
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米澤穂信さんの「〈小市民〉シリーズ」の第3作目です.
シリーズとしては,1作目に「春期限定いちごタルト事件」と2作目の「夏期限定トロピカルパフェ事件」というものがあります.
この本自体はかなり前に買っていて,読まずに積みっぱなしにしていたのですが(何年も!),先日新幹線で移動する機会があって,「作業をしようと思ってもどうせ寝ちゃうから読んでいなかった小説を読んでおこう」と思って掘り返した次第です.
ちなみに,掘り返してみたら春期限定と夏期限定は2006年の秋ごろに読んでいました(自分が高校生の頃です).今が2015年なので9年来ってことですね.さすがに前作の話の内容は詳しくは覚えていませんでしたが,読んでいくうちになんとなく思い出していました.
余談ですが,なぜ自分が前作を読んだ時期を確認できたかというと,ここではない昔更新していたブログに記録が残っていたから.見返すのはさすがに恥ずかしいのですが,こういう時に見返せるのはいいですね.そのブログでは,読書カテゴリの記事数が150を越えていました.まぁ,ラノベが多いのですがそれでもけっこう読んでいたんだなとちょっと感嘆しました.
はてさて,本題の小説の内容としては,小市民を目指す狐の小鳩くんと,同じく小市民を目指す狼の小佐内さんが前作の最後に互恵関係(はたからみると交際していることに近い)を解消していて,今作に入って早速,各々が新しく彼女・彼氏ができるというリア充っぷり.それこそが小市民たる日常らしいのですが,なるほど,自分は小市民じゃないですなと思った感じです.
序盤は日常的な交際生活を過ごしていて,のんびり読んでいられて心地よいです.その中で,日常的にもどうでもいいようなこと(バスの席で度の人が先に降りて座れるようになるかとか)を推理し始めるところとかも,〈小市民〉シリーズに共通した雰囲気があって,「そういえばこんな感じだったなー」とのんびり読めました.個人的には,1作目にあった例の「温かいミルクココアを作る方法」のトリック(?)は今でも覚えています(実践はできていませんが).
そんな中で,連続放火事件という非日常的な事件も並列してだんだんと事態が大きくなりながら起きていき,最終的にはその事件を解決するという,日常から始まっていつの間にか非日常な事件を解決しているというお話です.
個人的に読んでいて好きだったのは,作者の狙い通りだったのでしょうが,ラスボスが小佐内さんっぽいなーと思ってくるところ.この人ならやりかねんな,という印象を読んでいるうちに思い出しました.
あとは,そんな小佐内さんのスイーツ巡りがいいですね.個人的に,美味しいものが書かれている小説は好きで(坂木司さんのとか),この〈小市民〉シリーズも,タイトルにいちごタルトとかパフェとか栗きんとんとかついている通り,スイーツが出てくる場面が多いです.さらにスイーツだけを描写しているのだけではなく,そのお店の雰囲気とか店員さんの描写もあって,こういうお店に実際に行ってみたいなって思えるのがステキです.
ということで,久しぶりに読んだ小説でした.
この本は,上を新幹線の行きと帰りの2時間半x2くらいで読んで,下は2時間x2くらいかかったので,小説を読むのはけっこう時間がかかりますね.でも,久しぶりに読んでみて,読んでいる途中のワクワク感とか読んだ後の達成感を久しぶりに味わって,高校から大学にかけてよく読んでいたころを思い出しました.
ちなみに,まだ読まずに積んである小説がいくつかあるので,いつか機会が会った時にそれも読んでいきます.