年末年始の時間で禅や東洋哲学を学んでみる企画で、Jecyさんからおすすめされた本の一つ。


「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」(飲茶)

史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち | Amazon

東洋哲学の入門書。
インド哲学、中国哲学、日本哲学の流れを追いながら全体を通して東洋哲学とはどういうものかを知ることが出来ます。
著者の飲茶さんは、格闘技漫画の「バキ」が好きということで、バキの強い奴らは何かに引きつけられるように東へ東へと移動していき日本にたどり着いたこと(しかも、表紙のイラストはバキの作者の人による)。それと、東洋哲学も同様に、インドから始まり東へ東へと進み日本にたどり着いた偶然があることが「まえがき」に記載されており、これから最強の哲学者たち13人の選手紹介が始まる雰囲気が出来上がっています。


ちなみに、、、

途中の哲学者紹介も、二つ名があったり得意技があったりとユニークな感じになっています。これによって哲学者の名前と代表的な考え方の関係も印象に残りやすいです。

ちょっとふざけたような「まえがき」ですが、内容はいたって真面目です。哲学という難しい内容を、口語的な接しやすい文体で、簡単な歴史の流れや背景も交え、ミミズやピーナッツといった例え話も交えて、入門者になるべくわかりやすく伝えるとともに、耳障りの良い言葉や格言的な言葉に逃げずに、哲学の本質を伝えようとする一冊でした。

自分は、東洋哲学の入門書として初めて読んだ本がこれでしたが、いままで名前や言葉は知っているけれど曖昧だった内容のエッセンスを掴み取れ、東洋哲学の全体像や歴史、西洋哲学との違い、宗教との関係などを広く知ることが出来、見聞が広まりました。
また、冒頭に書いてある「本書を読んで東洋哲学を理解することは不可能である。」についても、読み終わったあとには大いに納得がいきます。

以下、本書の個人的な紹介&メモ

***

西洋哲学、よくある入門書との比較


この本の説明の仕方で特徴的だなと思ったのは、他のモノと比較してわかりやすくしているところ。西洋哲学と比較して東洋哲学を説明する。よくある入門書での解釈と比較して、もっと踏み込んだ解釈を説明する。この説明の仕方がわかりやすく、入門書として適していると感じました。

こむぎこをこねたものネタも拾える


Jecyさんの「こむぎこをこねたもの」でよく出てくる、「はらぎゃーてー」「ホジソワカ」といった言葉や、達磨大師、慧能といった、今までの週刊こむぎで登場した人物たちも登場します(当たり前ですが)。こねたものを知っている身からすると、「ここで出てくる言葉だったのか」とか「この人知ってるわ」という楽しみ方が出来ます。

悟りを開いても何も変わらない


本書を読む前には、東洋哲学や悟りに関してあまり詳しく知らず、だからこそ悟りを開くとすごいことになるんじゃないかと漠然と思っていました。しかし、本書を読んで、「悟りを開いても何も変わらない」ということが納得できる形で説明されており、知れてよかったなと思いました。「だから悟りを開く価値はない」というわけではなく、この話の詳しいところは本を読めば大体わかります。

当時の社会情勢と歴史の流れとともに哲学者の活動思想が知れる


どの哲学者も、その時に生きていた社会情勢やその直前の哲学者の思想の流れに沿って新たな哲学を生み出しているのだなと感じます。そのため、この本のように時系列で、その当時の社会情勢とともに説明されているのは理解がしやすいです。戦国時代だったからこそ、思いやりの大切さを広めるために仁と礼の考えが誕生したり、過去の哲学者や師匠の哲学を発展させたり、納得いかなかった部分を改めたり、人によっては社会情勢的には権力者に与する学者が多い中でそれを完全に無視して己の道を貫いたり。哲学者を取り巻く情勢や身の上とともに知ることで、その哲学者のキャラが立ってきて面白い話として読むことが出来ます。

今後の哲学への期待


その時の社会情勢にあわせて、哲学が変化していくのは当たり前のことで、本書の最後でも、「今までの禅の修行は、インターネットが発展して情報に溢れた現代では効果が薄くなっている」と語っています。そして、哲学を発展させるのは今を生きている(読者)我々であるとも。そう考えると今後、哲学がどう変わっていくのか、哲学をどう変えていくのか、新しい哲学をどう生み出していくのかということも興味深く、今後の哲学の変化にも期待できるなと思いました。

例え話で個人的に思ったところ


本書の例え話の中に、脳のニューロンの活動をミミズに置き換える話がでてきました。その話から最近のAI(人工知能)ブームで注目されているディープラーニングを思い返しました。ディープラーニングは、脳のニューロンの仕組みを計算機的に再現するというものです。ディープラーニングによって、画像中に猫がいるか、クルマがあるかどうかなどを識別することなどができるようになってきました。一方で、本書では「色即是空」の「空」の考え方を説明する際に、「自転車」というものが存在するのではなく「自転車」という言葉で勝手に境界を作って存在させているという話をしています。そして、言葉を使っているうちは「智慧の境地」にはたどり着かない(悟れない)と言っています。ディープラーニングでやろうとしていることは、画像などのデータに「猫」「クルマ」「自転車」などの言葉をつけるということです。そう考えると、ディープラーニングは悟りとは逆方向に向かわせる技術なのかなと思いました。

それから、本書では「赤についての知識」と「赤を実際に見て体験すること」の違いの例え話がよく出てきます。これから、Nicholas Humphreyの「赤を見る」という書籍を思い出しました。自分は読んだことは無いのですが、一時期とても話題になっていた本です。「赤を見る」という本もクオリアの話をしている本で、東洋哲学とも関連しそうなので後で読んでみようかなと思います。