映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃 | Amazon ビデオ

特に見たいテレビも無い時にAmazonプライムで映画見ていました。
この前はロボとーちゃんを見ていましたが、今回はユメミーワールド。これも評判の良い作品らしいので見てみました。

以下、ネタバレ注意。

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自分の見た印象だと、メインのテーマは「親の過保護」で、サブに「友情」と「母親への信頼」があるという感じでした。
母親が事故で亡くなって悪夢を見るようになった娘。父親が、その娘を悪夢から過保護に守り続けるという構図。しかも、娘を守る上では他人の被害は顧みない。さらに、娘を守る上で邪魔になるので友達を作ることも許さない。親の過保護によって、娘の状態は一見悪くなっていないようにみえるが、根本的な問題は解決しない方法をとっているため状態は良くはならない。娘の状態は悪くはなっていないが停滞しているので、他の子供は社会的に成長していく中で取り残されるため、相対的にはゆっくり悪化していく。具体的には「友情」の部分。赤ちゃんの頃は親や家族だけが社会的に関わる対象であるが、幼稚園児くらいになると関わる社会が広がり、他の家庭の同年代の子供とも接する機会が生じる。これが友情である。本来の子供はこのように関わる社会を段々と広げていくことで成長して親の保護がなくても生活できるようになっていき、親に依存しなくても自分で生きていけるようになっていく。これが足りていなかった娘を、しんちゃん達が友達になることで解決していく。
一方で、悪夢の根本的な原因は別のところにあり、それが「母親への信頼」の部分。母親を亡くした事故の原因は娘にもあり、そのため娘は「母親が自分を恨んでいる」と思っている。そして、それが悪夢となって現れている。それは娘の思い込みなのであるが、母親は既に亡くなっているのでそれを正すことは不可能である。その思い込みを正すために、みさえが「母親は自分の子供を恨んだりしない」ことを伝え、娘は悪夢の根本的な問題に対処できるようになる。この「母親への信頼」を認識した部分は、上記の「親の過保護」と「友情」とは一見独立のようにみえるが、深く関連している。そもそも、しんちゃんと友達になって過保護の状態から抜け出せていなければ、「母親への信頼」を伝えることはできなかった。というのも、ラストのシーンでユメミーワールドの装置が壊れ、自由に夢の世界に入れなくなった。その時に、悪夢と戦う娘の夢に入れたのは、友達になったしんちゃん達だけである。そして、みさえは家族であるしんちゃんの夢に入ることで、夢の中で娘に会って母親の思いを伝えることが出来たからである。ということで、友だちができて関わる社会が広がっていたことによって、根本的な問題も解決できたのである。

この作品から、「親の一番の役割は子供を独り立ちできるようにすること」ということを再認識させられました。

また、すこし脱線した話をすると、この作品も前回見たロボとーちゃんも、話の展開がガラッと変わるのがちょうど半分くらいの時間が経ったところだったので、そういう構成も考えられて作られてるんだなって思いました。自分が上に書いた作品の流れとかコンセプトまとめも、抽象的には書けるけれども、それを映画という作品として明示的に言葉で示さなくても伝えられる形にする、というのはとてつもない業だなと思います。
ちなみに、脚本の一人に劇団ひとりさんが入っていて、なんか印象的でした。