久しぶりに美術展を見に行ってきました.
しかも1日に3件も.さすがに疲れました.
今回は大学の頃所属していたサークル繋がりの人で一緒に見てきました.

見てきた展示はこれらです.
ボッティチェリ展
魔女の秘密展
村上隆の五百羅漢図展

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ボッティチェリ展



イタリアの画家サンドロ・ボッティチェリと,その師匠フィリッポ・リッピ,師匠の息子フィリッピーノ・リッピの3人がメインの展示.
美術そんなに詳しくない人間からすると,今回は展示がなかったけれど,「春」と「ヴィーナス誕生」がボッティチェリの作品だということを初めて知り,今回展示があった「書物の聖母」も有名.
ボッティチェリを中心として関連の深い3人がメインの展示なので作者同士の繋がりが分かりやすい展示でした.
全体の印象としては,
・フィリッポは貝殻背景好き過ぎ.
・ボッティチェリの頃から,レースとか天使の輪がシースルーなカッコいいものになってる.(フィリッポ時代は天使の輪はベタ塗り)
・聖母子の絵が多いから,赤い服に青い上着のコントラストが綺麗な作品が多い.

展示会を見て回りながらメモった内容を載せておくと,

「ノリ・メ・タンゲレ(我に触れるな)」,サンドロ・ボッティチェリ

"Noli me tangere" (タイトルがカッコいいからメモっていただけ)

「聖母子(書物の聖母)」,サンドロ・ボッティチェリ

有名なやつ.金のベールと天使の輪っかが繊細に描かれていて綺麗.青が綺麗.青と金がコントラスト的に映える.

「聖母子、洗礼者聖ヨハネ、大天使ミカエルと大天使ガブリエル」,サンドロ・ボッティチェリと工房

イラストアド
(綺麗&かっこいい女性の天使が複数人描かれていて,もしTCGだったらイラストアドな一枚になるだろうな,というメモ)

「美しきシモネッタの肖像」,サンドロ・ボッティチェリ

髪と服が女性らしい柔らかい感じが出てて良い.服のピンクがさらに女性らしさを出している.

「アペレスの誹謗(ラ・カルンニア)」,サンドロ・ボッティチェリ

裸が真実
(絵の中で複数の人がそれぞれ,「誹謗」とか「不正」などなどを象徴する行為をしている場面を描いた作品というのを,解説で細かく説明されていました.その中で,絵の端にいる裸の人が「真実」を表しているって解説されていたのがツボに.「裸は真実なのか〜」と感心してました)

「聖母子と聖コスマス、聖ダミアヌス、聖ドミニクス、聖フランチェスコ、聖ラウンティウス、洗礼者聖ヨハネ(トレッビオ祭壇画)」,サンドロ・ボッティチェリと工房

天使の輪の描き方が3次元的な位置関係を意識してある.頭頂方向のベクトルが天使の輪の平面と垂直に交わる方向になっている.
一番右の人がめっちゃイケメン.

魔女の秘密展


美術品を鑑賞するというよりも,魔女に関する美術品から魔女の歴史を知るというような展示.展示会場の中に,魔術書っぽい本が詰まった本棚が並んでいたり,入り口に光でできた魔法陣があったり,音声案内を利用すると魔女帽子を被ることになったり,魔女裁判の尋問が疑似体験できるような展示になっていたりと,アトラクション的な演出も多い展示でした.

入ってすぐの最初の展示は漫画やアニメの魔女から始まっていて,「Fairy Tail」の真島ヒロさんの魔女イラストや,「弱虫ペダル」で有名の渡辺航さんの「まじもじるるも」など,普段美術館とか行かない層を意識した展示になってた用に感じます(会場もラフォーレ原宿ですし).
その後は,魔除けのお守りや,魔女と似た系列の不思議な力としての(一部では同一視されていた?)錬金術が紹介されていたり.
天災やペストなどの原因を魔女の仕業として,物乞いの人など弱い立場の人を魔女だと仕立てあげて迫害し始め.
最初はウワサから始まったものが,その当時の交通網や本などの情報網の発達によって,考え方がどんどんと広まり,魔女裁判という具体的な運動にまで発展したというのが改めて驚かされました.情報の力というのはすごいですね.
さらに,魔女裁判がどこでもできるように,マニュアルみたいなものまで発行されていたり.魔女の定義から始まって,魔女の見分け方まで,非科学的なはずのものが理論的にルールとなって書かれ,それが実際に適用されるというのが恐ろしいですね.
尋問も,魔女と白状するか,しなければ拷問ということなので選択肢も無いに等しいですし.
かろうじてまだ人間味があるなと思ったのは,社会学者の中の説では,拷問器具は実際に使われることはあまりなくて,自白させるために脅す手段としてが主だったということや,生きたままの火炙りの刑は残酷すぎるから,途中からは温情措置として斬首刑のあとに火炙りしていたとか(処刑している時点で酷いですが).
魔女裁判の時代が終わる頃の美術作品の展示では,悪としての魔女というのではなく,不思議な存在としてのものや,禍々しさと女性的な魅力をもつものとしての作品もあったのが印象的でした.サバトとかワルプルギスの夜の図とか百鬼夜行っぽかったです.

あと,「マグダラのマリアの誘惑」っていう作品があったのですが,一つ目に行ったボッティチェリ展でも,フィリッピーノ・リッピの「マグダラのマリア」があり,どことなくつながりを感じました.「マグダラのマリア」=「罪深い女」という考え方もあるらしく,悪の女としては魔女と近い扱いだったのかなと思います.

魔女裁判ではドイツが群を抜いて被害者が多かったようで(たしか2万5千人ってあった),ドイツには魔女街道とかいうところもあるらしいので,もし行く機会があればそういうところも見てみたいなと思った展示でした.

村上隆の五百羅漢図展


村上隆さんも五百羅漢図も知らない状態で行きましたが,見ていくうちにいろいろと知れて,非常に面白い展示でした.
村上隆さんの作品は,日本画x現代アートという感じで,江戸時代に描かれた五百羅漢図にインスパイアされて現代版を作ったというものでした.
また,写真撮影OKだったのでいろいろと撮ってきました.


入り口からインパクト強い.



ポップなものと日本画的なモノが融合されています.もともとはアニメーターになりたかったけれど,なれなかったから日本画の道に進んだという経歴がそのまま作品に現れている印象です.


これは,淡い水彩的な着色+くっきりしたものという組み合わせが良いなと思って撮ったもの.


五百羅漢図の一面.
すごく長いサイズのモノが合計4面,朱雀,玄武,白虎,青龍に対応してあります.
五百羅漢は,一説では五百の羅漢さんが500種類の苦悩から救ってくれるという意味合いがあるらしいです.
東北大震災をきっかけに制作しようときめたということで,短い期間でこの大作を完成させるために200人以上の参加者を集めたとか.
この人数をまとめるために,シフトを組んだり,羅漢の設定を調べて書き出して共有したりなどをしたらしく,その公開された資料の膨大さも驚きでした.


指示や修正のやり取り


羅漢の設定資料


スケジュール表

やはり,これだけの作品を作るには並大抵のさらに上を行く行動じゃないと実現できないんだなと思いました.また,人数を集めて作品を作るというのが,一つ目に見たボッティチェリの「工房」の考え方を踏襲していて,見てきた展示でも多少繋がりがあったなって思います.

展示の最後に,村上隆さんのメッセージがあって,これもかっこよかったです(下は文字に起こされたもの).


ここまで言えるようなことやれる人になりたいです.



ということで,長々と書きましたが美術展を見に行った記録でした.
サークルのOB・OG会が形成されれば,今後もこんな感じで見に行く機会ができるかなと思います.