大森靖子さんの「きゅるきゅる」の歌詞の一節からもじっています。

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この曲の中に、
「ググってでてくるとこならどこへだっていけるよね」
という歌詞があります。
素直に受け取ると、「地図とか行き方とかの情報が分かるところだったら、どこへだって行くことができる」って意味でしょう。ポジティブに捉えると、情報として行き方とかやり方がわかっているんだったら、実際に行ってみたりやってみたり挑戦してみよう というような意味合いがこもっているのかなと受け取れて、「イイ歌詞ダナー」となるわけです。

しかし、大森靖子さんの場合、そんな単純なものではないようです。
大森靖子さんのブログ「あまい」に、きゅるきゅるの曲解説が載っています。
そこには、

”ということでググってでてくることに本質なんて一つもありません。”

との記載が。
しかも、その後に続くのが、

"そして歌詞なんかフックでしかないんできちんと自分自身の嫌悪感や美意識を持っていてほしいです。教科書じゃなくて音楽なんで。"

という文章です。

まず、上の方で僕が「ググってでてくるとこならどこへだっていけるよね」という歌詞に込められた意味はどういうものなんだと考えていましたが、そこに”歌詞なんかフックでしかないんで”という言葉が突き刺さります。その次に”教科書じゃなくて音楽なんで。"の部分も。
この点については、歌詞の意味を普遍的に決めようとすることが教科書的だというとこで、世論とかその他大勢の感性ではなく、音楽について個人としての自分自身がどのように受け止めるのかが大切ということを言っているのかなと思います(この解釈も僕個人のものでしかないです)。(←さらに言うと僕個人のものでしかない解釈であることが大切であるとも言えます。)

ということで、ブログの内容も含めた僕個人の解釈をしていってみます。
「ググってでてくるとこならどこへだっていけるよね」というところは「行き方の情報がわかるところだったらどこでも行ける」と解釈していましたが、それに対しては、
”ということでググってでてくることに本質なんて一つもありません。”
とのことです。
個人的にここらへんから思うのは、グルメサイトとか口コミサイトのイメージ。
「ググってでてくる」ところなんて既に誰かが行ったことがある場所です。例えばそこが食事処だとします。グルメサイトにはそこに既に行ったことのある人が色々と評価や感想を書き込んでいます。そういうものを見て、実際に行ってみて、サイトでおすすめされていたものを食べて、サイトで書かれていたのと同じような感想を持って、ただの追体験をするだけ。そこには、個々人として感じたものとか感想とか経験とか意見とかは全くなく、他の大勢が作り上げた経験や感想を受け取るだけ。そんなものに本質なんて無いっていうのはそれはそうです。自分自身で実際に行ってみて、自分自身で経験して、自分自身の頭で考えたり感じたりしたことではないと意味が無いんだと思います。
もう一つの解釈としては、極端ですが、ググって出てくることなんて既に他の人が行ったことがある場所だったりやったことのある事なので、そんなものではなく、未だに誰も行ったことがない、やったことがないことをやってみろよってこと。創作とか研究とかは真にこういうことが求められます。

また、もう少し長く歌詞を引用すると、実は、
「連れてってよ、ググってでてくるとこならどこへだっていけるよね」
となっています。
その一つ前のブログ記事で、喧嘩した人と仲直りする時にGoogleマップにのっていない道を連れて行ってもらって東京タワーが見える海辺に辿り着いた話があります。まさに、歌詞通りだなって感じました。ググってでてくるところなら誰だってつれて行けるけど、あなたはまさかそんなところに連れて行くつもりなの?って言われているような気がします。ググってでてきた、他の人の受け売りのところではなく、自分だけが知っているようなそういうところに連れて行ってくれるような人じゃないとつまらないだろうと。

ちなみに、ブログのほうで、"本質"という言葉が使われていますが、僕の知る限りでは大森靖子さんはこの"本質"って言葉をよく使っています。ブログでもですが、特にラジオで。ネットだけの情報なんて意味がなくて、直接会って話さないと本質は見えないとか、自分で考えないと本質にたどり着かないとか。僕は、この大森靖子さんが本質を求める姿勢が好きです。むしろ、本質を求める姿勢が見て取れるから、大森靖子さんのことを好きになったとも言えます。また、ここでいうところの”好き”とは、likeでもloveでもなくrespectだなってこの前歩きながら考えている時に気づきました。日本語の好きの中には尊敬の意味で使われるものもあるんだと。
他の観点からも書きたいことがあるけれど、盛り込みすぎるのは主張がぶれるのでこのへんでまとめます。

ググってでてくるとこならどこへだっていけるけれど、そこに"本質"はない。
ネットで出てくる他者が作った情報に"本質"は無いから、自分の体で実際に行ってやってみて、自分自身で経験して感じてこい。そこから"本質"を見つけろ。
というのが僕の個人的な「きゅるきゅる」の「ググってでてくるとこならどこへだっていけるよね」の部分の解釈です。



余談:
深夜に書いたからこんなに長くなっちゃってます。しかも、ラジオの感想のメールも書いたからすごく時間が経っているという。
というか、そもそも「きゅるきゅる」って言葉自体なんなんだ?