「トリツカレ男」(いしいしんじ)

勝った本人が読む前なのに貸してくれた本。
このブログも見ているだろうから、ネタバレにならない程度に感想を残しておきます。

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トリツカレ男は、ホラーなネーミングだけれども、そういう話ではなく、何かにトリツカレたようにハマってしまう男の話。
外国語にトリツカレたり、三段跳びにトリツカレたり、サングラス集めやオペラにトリツカレたり。トリツカレると仕事中も三段跳びの練習をしたりと、やっかいだけれども、常にそのことばかりやっているので全国大会で優勝できるほどの実力までいっちゃいます。ただ、大会で優勝することが目的ではなく、それをやることだけにトリツカレているので、大会の前日にトリツカレルものが変わったら大会に行かずに新しくトリツカレたものに専念しちゃうという。
そして、トリツカレ男が次にトリツカレたのが、公園で風船を売っている女の子。そこから話が転換していきます。
トリツカレ男が変わり者だったり、友達に喋るハツカネズミがいたり、町の人や女の子とのやりとりもどこかほんわかしてるお話でした。
話の後半の内容は、点と点がきれいにつながって線ができていく感じがします。小説だからこんなにうまくつながるんだ、とも思いますが、実際の人生でも、計画したとおりに進むことはすくなく、過去にたまたまやっていたことが繋がってなんかうまくいく、ということのほうが多いなと感じました。そういう意味でも、この小説のトリツカレ男はちょっと変わってはいるけれども、現実とも近い存在だと感じました。
最終的に幸せなお話で良かったです(ネタバレ)。